死んだ黒石を取り忘れた三村智保

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2015年2月の囲碁フォーカスで特集された。

石は囲めば取れる。初心者でも知っているルールを忘れてしまった三村智保。

1991年8月29日、第17期名人戦三次予選。

岩田達明九段と三村六段(当時)の対局は終盤に入っていた。白番の三村は206手目で上辺寄りの黒1子を囲んだ。しかしその黒石を取り上げなかった、というか取り忘れてしまった。

その後まもなく事態を把握した両対局者。

場が凍りつく。記録係や立会人など、まわりは一切口をはさんではならないことになっている。

岩田が立会人を呼んでくるようにまわりの関係者にうながしたとき、「僕の負けです。」と三村。

この対局の記録係は当時まだ12歳で院生だった下島陽平八段。

石の取り忘れはあまりにショッキングだったようで、「取り忘れから2手進んで初めて両対局者が気づいた」と鮮明な記憶と共に当時の状況を説明していた。

日本棋院の対局管理規定にある「着手の完了および石の取り上げ」についての決まりは以下の通り。

第28条(3) 取り上げなければならない石を取り残した場合、そのことをもって反則とはしない。対局者のいずれかが取り残しに気づいた時点で、すみやかに石を取り上げることとする。

このルールは三村が石を取り忘れたときにはまだ存在しなかった。そしてあったとしても負けになることはなかった。

三村は当時を振り返り「そのときの行動は棋士としては間違っていなかったと思うが、勝負師としては甘かったかもしれない」というコメントを残している。

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