蘇った彫刻
再建から約250年の平成14年に修復工事が開始され、平成23年に完了。
聖天堂の外壁面にある古びた彫刻には、修復により華麗な彩色がほどこされ、江戸中期の文化遺構に再び息吹が吹き込まれたように思われたが、問題が1つ残った。
囲碁を打つ神たち
壁面には、布袋、恵比寿、大黒天の七福神の3人が囲碁を打っている彫刻がある。
神も囲碁を打って過ごせるくらいに平和な世の中だということを表現しているのだが、250年間風雨にさらされた盤面は全くわからなくなってしまっていた。
碁石がない
神々が楽しく打っている囲碁の盤面に碁石がない。寺は途方にくれたが、このピンチを救ったのが日本棋院熊谷支部の新井三郎。
この対局にふさわしい棋譜を用意してくれた。
道策の棋譜
新井が選んだのは約300年前の棋譜で、道策全集第一巻に掲載されている。
1697年(元禄10年6月26日)、熊谷本碩(ほんせき)と本因坊道策の一局。熊谷が黒番。
時代も棋譜も申し分ない選択をしてくれた新井に寺は大満足した。
良縁を願って
彫刻で黒番の恵比寿がまさに打とうとしているのは115手目。「いいご縁」がありますように、という願いがこめられた。