2016年10月の囲碁フォーカスで「院生」が特集された。
院生の条件
院生は囲碁プロ棋士の卵で、院生になるためには以下の条件を満たさなければならない。
院生(日本棋院 東京本院)
- 棋士を志す青少年
- 志願できるのは14歳を迎える年度まで(棋力は14歳でアマチュア6段くらいが必要)
- 院生でいられるのは17歳の3月まで
- アマチュアの大会には出られない
2番目と3番目の規定について、外国籍の院生はその限りではない。別規定が設けられている。少し昔までは18歳以上でもプロを目指せたが、囲碁の強い中国や韓国でのプロ棋士若年層化に対応するためにも院生の年齢制限が設けられたようだ。
院生研修
市ヶ谷の院生研修は基本的に土日に行われる。日本棋院七階に研修室がある。午前8時半には早い人は研修室に到着する。平日は他の用途にも使われているので、院生研修用に机を並べ替えたり、碁盤や碁石を棚から出したり、勝敗表を確認したりする。早く来た人がこれらの準備を行う。
9時前までには準備は終わるので、その後は研修が始まる9時半まで、自習時間。早く来た人同士で対局したり、詰碁を解いたりして時間を有意義に使う。
9時半になると院生師範の合図でリーグ戦の対局が始まる。番組では院生師範として泉谷英雄八段と岡田伸一郎八段が紹介されていた。
市ヶ谷の日本棋院には院生が50人いて、AクラスからDクラスのいずれかに属している。クラス毎でリーグ戦が行われ、毎月の対戦成績によってクラスは上下する。Aクラスは一日に2回対局、一番下のクラスは最大で6回対局がある。
番組で紹介されていたのはAクラスの研修だと思われるが、院生研修は午前と午後で各三時間弱、合計で五時間ぐらい行われる。
採用試験
「冬季採用試験」とよばれるプロ試験を受けられるのは成績上位20名。プロ試験では2ヶ月かけて受験者が総当たり戦を行う。プロになれるのは全体で6名、東京からは3名。市ヶ谷に通う院生がプロになれる確率は約5パーセントということになる。非常に狭き門。
決断力
群馬や千葉など、市ヶ谷から遠いところに住んでいて片道三時間ぐらいかけて通う院生もいる。また、多くの院生は学校(学業)と院生生活の両方を行っているが、なかには高校に行かないで院生一本という人生を賭けた選択をした人もいる。
自分の中でリミットを決めて中学早々にプロになれないと院生を辞める人がいれば、年齢制限(だいたい高校二年の終わり)で院生を辞めなければならない人もいる。プロになる人よりも辞めていく人のほうが圧倒的に多い。
メンタルの強さ
院生生活はまさに過酷なサバイバルレース。「相手が強いと自分の手に自信がなくなる」と弱音を吐きたくなることのほうが多いかもしれないが、「普段強い人と打てないので勉強になる」とか「いつでも碁の勉強ができる環境があっていい」と前向きに院生として頑張る姿も見られた。
囲碁フォーカス講師の三村智保が開く囲碁塾にも院生の生徒が何人かいるようで、現実的には15歳ぐらいまでにプロになれるのが理想らしい。そう考えたとき、碁の実力はもちろんだが精神的にも大人になっている必要があり、そのメンタルを育てるほうが難しいかもしれない、と話していた。